繰り上げてオルカンに突っ込もうと思った
一度は繰り上げ受給に本気で心が傾いた。
理由は単純で、早くもらってその分オルカンに突っ込んだ方が増えるんじゃないかと思ったからだ。
実際、ここ5年のオルカンの伸びを見ていれば、そう考えたくなる気持ちはわかってもらえると思う。
年金なんて座して待っているだけの資産より、市場に置いた方が働いてくれる。
そう思っていた時期が私にもあった。
でも計算を進めるうちに、話はそう単純じゃないと気づいた。
税金と社会保険料という落とし穴
まず税金と社会保険料の話。
年金の受取額が増えれば、当然そちらにも響いてくる。
今は配当も、NISAなら非課税、特定口座でも受け取り時にすでに税金が引かれている形だから
意識しづらいけれど、これから配当が育ってくればくるほど、住民税や国民健康保険料の計算に効いてくる可能性がある。しかもNISAの非課税枠だって、この先ずっと今の形のままとは限らない。
「収入があるところに課税を」という流れは、今後強まりこそすれ弱まる気配はない。
一瞬よぎった、姑息な計算
そこで一瞬?こんな計算も頭をよぎった。
年金の受取額を抑えれば、所得が下がることで税や保険料に影響する可能性があるのではないか、
と考えた。そうすれば「住民税非課税世帯」なんてこともあり得るのでは?と。
今は夫の年金があるからその話は関係ないが、この先もし自分ひとり、あるいは同居する成人の子どもと二人だけの世帯になったとしたら、話は変わってくる。
世帯の構成人数や他の家族の状況によって、非課税ラインの見え方はまるで違ってくるからだ。
うちには「もう一人分」の生活がある
我が家には同居する成人の息子がいる。
しかも今は定職に就いておらず、収入がない。
ここが大事なところで、同居する子どもがいる=世帯収入が増えて安心、という単純な話ではないのだ。むしろ収入のない大人が一人世帯に加わるということは、生活を支える人数は変わらないまま、生活費を必要とする家族が一人増えるということでもある。
こういう家庭は、世間で語られる「老後の年金戦略」の前提から静かにこぼれ落ちる。
夫婦二人の老後、子どもは独立して仕送りをくれる側、という王道モデルでは語られない事情がある。だからこそ、世帯としての税・保険料の計算も、独身や夫婦のみの老後を想定している家庭とはまったく別物になる。
「年金をいくらもらうのが得か」という問いの答えそのものが変わってくるのだ。
これは、うちのような家庭にしか出てこない視点だと思っている。
結局、65歳に落ち着いた3つの理由
結局、繰り上げをやめて65歳受給に落ち着いた理由は3つ。
ひとつ、オルカンの伸びは今後も続く保証がどこにもない、という当たり前の事実。
5年の実績は参考にはなっても未来の約束にはならない。
ふたつ、年金は「増やすもの」ではなく「減らない土台」として置いておく方が、
資産全体のリスク管理としては理にかなっている。
値上がりを狙う資産と、確実に入り続ける資産は役割が違う。
みっつ、税金や保険料を減らすためだけに年金を意図的に減らすという発想は、たとえ制度上可能だとしても、まだ確定していない将来の世帯状況をあてにした皮算用にすぎない。
今の時点で確実に言えるのは、標準的な65歳受給が最も無難だという、身も蓋もない結論だった。
姑息なことを考えたりもした。でも考えた上で、それでも王道に戻ってきた。
この「一周まわって王道」という感覚こそ、35年真面目に勤め上げてきた人間の結論なんだと思う。
老後は、大きく増やすことよりも、大きく失敗しないことの方がずっと大切なんだろうと思う。
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※本記事は筆者個人の考えと試算に基づくものであり、特定の受給方法や資産運用を推奨するものではありません。年金の受給時期や税・社会保険料の取り扱いは個々の状況によって異なりますので、実際の判断にあたっては年金事務所や税理士など専門家にご相談ください。


