車がいらない街に、車がある不思議
世の中には「車がないと生活できない街」がある。
その一方で、「車を持っている方がむしろ不自然」という街も、確かに存在する。
我が家は、後者だった。
地方都市の主要駅まで10分で行ける駅が2つも徒歩圏内にあるマンション。
徒歩3分以内に、スーパー、ドラッグストア、コンビニ、ダイソー、ニトリ、病院、ファミレス、回転寿司、コメダ珈琲店。
銀行だって選び放題。
そんな恵まれた立地に住みながら、我が家は長年、当たり前のように車を持ち続けていた。
理由なんて、正直なかった。「みんな持ってるから」くらいのものだ。
家族全員「運転嫌い」という致命的な矛盾
子どもが小さかった頃はまだ、ちょこちょこ乗る機会もあった。
けれど子どもが大きくなるにつれ、我が家の本質が容赦なく露呈する。
家族全員、揃いも揃って運転が嫌いなのだ。
出かけるときはいつも電車、買い物は徒歩か自転車。
こうなると車は、立体駐車場に鎮座するだけの「重厚なオブジェ」でしかない。
ここ5〜6年は、一年に2〜3回動かすだけ。
しかもそれすら、お出かけのためではない。
「あまり乗らないと壊れるから」という、本末転倒な理由でのちょい乗りだ。
極めつきは冬場。夫は「バッテリーが上がると困る」からと、わざわざ寒空の下、
立体駐車場までエンジンをかけに行くだけの謎の儀式を続けていた。
一体何のために駐車場代を払い、何のために維持しているのか。
気づけば私たちは、車の下僕になっていた。
査定士が言葉を失った「20年で2万キロ」
3年前、ようやく正気に戻り、20年乗った愛車を手放すことにした。
新車価格は300万円弱。
査定に来た担当者が一番驚いたのは走行距離だった。
「20年で、2万キロちょっとですか……」
普通なら2年で走ってしまう距離を、20年かけて走った計算になる。
本来なら処分費用がかかってもおかしくない年式だ。
ただ当時は世界的な半導体不足で中古車市場が高騰しており、
「今すぐ乗れる車」が足りていなかった。そのタイミングも味方して、
まさかの10万円で買い取ってもらえた。
グルメ券とQUOカード6,000円分のおまけまでついてきた。
処分費用を覚悟していた車が10万円になり、しかも美味しいものまで食べられる。
これは嬉しい誤算だった。
手放して初めてわかった「年間25万円」の正体
車を手放してから、驚くほど現金が貯まるようになった。
乗っていなくても、毎年これだけのお金が出ていっていたのだ。
• マンションの立体駐車場代 月8,000円(年間9万6,000円)
• 自動車税 約5〜6万円
• 任意保険料
• 車検代(2年に1回を年換算)
合計すると、年間およそ25万円。
20年間にすれば、約500万円。
そこに車体価格の300万円を足せば、ほとんど乗ってもいない車に
約800万円を注ぎ込んでいた計算になる。
手放した瞬間、肩の荷がすっと軽くなった。
夫の「冬のエンジン点火の儀式」もなくなり、家計もすっきりした。
3年経った今も、「車がなくて困った」と思ったことは一度もない。
固定費は、一度見直せば何年も効いてくる
車だけではない。
我が家は固定費を見直すたびに「もっと早くやればよかった」と思ってきた。
携帯電話もその一つだ。
以前は家族4人で毎月3万円以上払っていた携帯料金。
格安SIMへの乗り換えと、娘の独立が重なり、今では家族3人で3,000円ちょっとで済んでいる。
夫は楽天モバイル、私と息子はLINEMO。
もう5〜6年使っているが、不便を感じたことはほとんどない。
娘にも何度も勧めてようやく乗り換え、最初はワイモバイル、今は楽天モバイル。
仕事で全国を飛び回り、海外へ行くことも多く通信量もかなり使う方だが、
「困った」という話は聞いたことがない。
会社の同僚にも「格安SIMにすればかなり安くなるよ」と話すことがある。
それでも実際に乗り換える人は、意外と少ない。
「何となく不便そう」「通信が遅いんじゃない?」
そんなイメージや、大手キャリアへの安心感が根強いのだと思う。
ただ、一つだけ注意してほしいことがある。
以前の私のようにキャリアメールを使っている人は、
乗り換える前に登録先を確認しておいた方がいい。
銀行や証券会社、ネットショップ、各種会員サイトなどにキャリアメールを登録している場合は、
先にGmailなどへ変更しておくと安心だ。
何も考えずに先に乗り換えてしまうと、
「あれも変更、このサイトも変更」と後から意外と手間がかかる。
そこさえ準備しておけば、格安SIMへの乗り換えは思っているより難しくない。
投資で資産を増やすことばかりに目がいきがちだけれど、
お金を貯める一番の近道は、毎月当たり前のように出ていく固定費を見直すことだったりする。
車、携帯電話、保険。
一度見直せば、その効果は何年も続く。
我が家の資産がここまで増えたのは、投資だけのおかげではない。
「出ていくお金」を一つずつ減らしてきた積み重ねも、間違いなく大きかったと思っている。


