実体験から考える教育資金の正解
「大学費用、株に投資しておいてもらった方が良かったわ」
大学を卒業したものの、いまは進路を模索している息子が、ぽつりとそう言った。
一瞬、返す言葉に詰まった。
ただ、この一言は単なる軽口ではなく、
「親のお金を活かしきれていないのではないか」
という本人なりの葛藤の表れだと感じた。
本記事では、実際に子ども2人を奨学金なしで大学に通わせた経験をもとに
教育費の準備について書いてみることにする。
奨学金は「マイナススタート」になる現実
2026年時点、日本学生支援機構の第二種奨学金(有利子)は、固定方式で年2.423%。
社会に出た瞬間から利息付きの返済が始まる仕組みだ。
仮に300万円借りた場合、単純計算でも利息負担は数十万円規模になる。
これは若年層にとって決して軽いものではない。
つまり奨学金は、「学ぶための手段」であると同時に、
キャリアのスタート地点に負債を持ち込む制度でもある。
私には「進学」という選択肢すらなかった
一方で、私自身は大学進学という選択肢を持てなかった。
家庭の方針は「高校までで十分」というものだったからだ。
当時は今以上に学歴による就職格差が大きく、
大卒と高卒の差ははっきりと存在していた。
だからこそ、自分の子どもには同じ思いをさせたくない。
その一点だけを軸に、教育資金の準備を続けてきた。
1990年代は「投資」という選択が現実的ではなかった
子どもが生まれた1990年代、教育資金の準備といえば学資保険が主流だった。
現在のように、
• 低コストのインデックスファンド(いわゆるオルカン)
• ネット証券による簡単な売買
• NISAのような税制優遇制度
といった環境は存在しない。
当時の株式投資は、
• 手数料が高い
• 情報が限られている
• 分散投資が難しい
という状況で、教育資金のような「絶対に減らせないお金」を預けるにはリスクが高かった。
そのため、元本確保を重視して学資保険を選ぶのは合理的な判断だったと言える。
教育費は2人で2000万円超、それでも後悔はない理由
結果として、子ども2人を奨学金なしで大学へ進学させた。
かかった費用は合計で2000万円以上。
• 私立大学の学費(二人で1,200万ほど)
• 一人暮らしの仕送り(月10万円)
• 美大の材料費
これらをすべて親が負担した。
金額だけ見れば大きな支出だが、
「教育機会を確保した」という意味では十分に価値のある投資だったと考えている。
教育費は「リターンが見えにくい投資」
金融投資と違い、教育費はすぐにリターンが数値化されるものではない。
• 就職状況
• キャリアの方向性
• 人生の満足度
こうした要素に長期的に影響するため、短期で評価するのは難しい。
実際、娘はフリーランスとして自立し、
息子は現在、自分の進む道を模索している段階にある。
どちらも「途中経過」であり、
現時点の結果だけで教育費の成否を判断するべきではない、と思っている。
息子の言葉に感じた「申し訳なさ」
「株に投資しておけばよかった」
この言葉の裏には、
「自分はまだ結果を出せていない」という意識があるのだと思う。
しかし親の立場からすれば、
大学に進学し、経験を積んだ時点で十分な価値がある。
教育費は“回収するもの”ではなく、
“可能性を広げるための支出”だからだ。
今なら「投資+教育費」という選択も現実的
現在は環境が大きく変わっている。
• 全世界株式インデックスファンド(オルカン)の普及
• 低コスト運用が可能
• 新NISAによる非課税投資
これにより、教育資金の一部を長期投資で準備するという選択肢は、
以前よりも現実的になった。
例えば、
• 児童手当をそのまま積立投資に回す
• 18年間の長期運用でリスクを分散する
といった方法も検討できる。
教育費に「正解」はないが、軸は決めておくべきだ。
振り返って思うのは、
「その時代の最適解を選べば十分」ということだ。
• 1990年代 → 学資保険中心が合理的
• 現在 → 投資との併用も有力
重要なのは、「リスクを取りすぎない範囲で準備すること」。
教育費はやり直しが効かないため、
安全性と成長性のバランスを取ることが現実的な解になる。
※本記事は個人の経験に基づくものであり、特定の金融商品を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


